PUPPYはギヤボックスに付属のRE-260モータ(マブチ)で倒立制御を行っています。倒立制御を実現するためにモータは正回転、逆回転が出来なければなりませんし、回転する速度も自由に変えられなければなりません。PUPPYでは、Hブリッジと呼ばれるモータドライブ回路を採用しこれらを実現しています。
図1
図2にHブリッジの模式図を示します。モータをはさんでスイッチが4つ接続されています。この形が'H'の形に似ていることからHブリッジと呼ばれるそうです。
図2
図2のスイッチを操作したときそれぞれの場合について見てみましょう。
SW1とSW2を閉じたとき
電池の+極と-極が直結することになります。ショートともいいます。電池が液漏れしたり、異常に加熱したりして危険です。 SW3とSW4を閉じたときも同様です。
SW3とSW2を閉じたとき
電池の+極からSW3、モータ、SW2、−極という経路で電流が流れます。モータに電流が流れるのでモータはある方向に回転します。
SW1とSW4を閉じたとき
電池の+極からSW1、モータ、SW4、−極という経路で電流が流れます。SW3とSW2を閉じたときとはモータに流れる電流の方向が違いますので逆に回ります。
以上からHブリッジではスイッチを閉じたり、開いたりして正回転、逆回転が自由自在に制御できます。次にモータの回転数を変える場合にはどうすればよいでしょうか。例えばSW3は閉じっぱなしにしておいてSW2のほうを閉じたり開いたりを繰り返すとモータは回ったり回らなかったりします。このSW3の操作を非常に早く行えばモータは連続して回ります。スイッチを閉じてる割合を増やせばより早く回り、割合を減らせば遅く回り、どんどん減らしていくとやがて止まります。Hブリッジはスイッチの操作で回転数も制御できます。
実際のPUPPYの回路ではスイッチの代わりにMOSFET(図3)という素子を使います。MOSFETの詳しい説明については専門書をご覧になっていただくとして、このMOSFETを使う利点は
大電流が流せる
ON抵抗が小さい
高速にスイッチングができる
ということでモータドライブ回路にはうってつけの素子なのです。
図3 MOSFET×4
PUPPYのモータドライブ回路を見てみましょう。(図4)
図4
図4のA,Bがそれぞれモータに接続されます。Q1〜Q4がMOSFETで、Q1,Q2がPチャネル、Q3,Q4がNチャネルです。この場合Q1とQ2はゲート(100Ωの抵抗と接続されている端子)にLOレベルの電圧を印加すると導通、Q3、Q4はHIレベルで導通します。FETのゲートの前のロジック回路でQ2とQ3が同時にONになるようなことが起こらないようにしています。P63には図5のようなPWM波形を印加しQ3およびQ4を高速でON,OFF(スイッチング)します。
図5 PWM波形